カテゴリ:N邸 木造住宅の耐震改修( 1 )

補助金を活用した耐震改修の一例

全国の自治体が旧基準で建てられた木造住宅の耐震診断を行っています。
私は愛知県の木造住宅耐震診断員として、地元の長久手市や尾張旭市からの委託を受け、耐震診断業務を行っています。
家屋の所有者から市町村窓口に申し込みがあると、建築士会内の資格者に業務が割り振られる仕組みとなっているのですが、長久手市内では5~6名の診断員がおり、一人当たり年間6~7軒の診断業務を行っている状況です。
申込者には無料の耐震診断となっていますが、私たち診断員には1軒当たり3~4万円の報酬が愛知県から払われています。
また、判定によって明らかになった耐震性を一定以上に高めるための耐震改修工事を行った場合、工事代金に充当する補助金が受けられる仕組みがあります。
金額は自治体によって異なりますが、平成23年度の長久手町では最大90万円でした。

ここでは最近行った耐震改修工事を例に順を追って説明します。


e0166543_15501748.jpg①診断 まずは自治体の無料耐震診断です。
私たち診断員が現地調査と図面から決められた計算法を使って判定します。
判定値1.0以上が安全レベル。0.7~1.0が倒壊の可能性あり。0.7未満が倒壊の可能性高い。
実際には0.4~0.6くらいが多いのですが、これを1.0以上にする改修工事に対して補助金が使えます。
今回の判定値は0.67でした。
②改修設計 どのような方法で改修するか?耐震性に効果的でローコスト、なおかつ結果的にバリアフリー向上など今よりも住みやすい家になるように。お家の方と打合せをしては耐震計算を試みます。
設計の手法としては第一には既存の壁を補強することですが、数が多くなると工事の長期化でコストアップするので壁を新設することもあります。
いずれにしても場所によって効きめが違うので、より効果的な補強を考えます。
また昔の瓦屋根の場合は瓦だけでも重いうえに、かわらの下に土が敷いてあり、その重さが強い力として働きます。
その場合、屋根の葺き替えによる軽量化も効果的な方法です。

e0166543_1652143.jpg今回の設計では既設壁の補強が6枚(壁幅90センチ単位)と新設の壁が1枚となりました。
これによって判定値は1.08にアップしました。
1.0以上で補助金対象工事となります。

③見積り 設計案を基に建築会社に見積りを出していただきます。 
時には設計案の修正をしながら最終金額を決定します。

④補助金申請 設計図や計算書、見積書など一式と共に補助金を申請します。
今回は満額の90万円の申請です。

⑤設計監理契約・工事契約・着工

⑥中間検査 主要な工程は私が検査・確認を行います。
自治体によっては担当者による1回の中間検査があります。
⑦完成・完了検査 同上 

⑧補助金交付手続き 以上で完了。

e0166543_1240332.jpg写真上から3枚までは既設壁の補強箇所です。
今回の設計はこの上に構造用合板を打つことで地震時の耐力を上げるのです。

本来は新築工事のように床下にある土台と天井の上にある梁までをカバーする張り方が良いのですが、そのためには床や天井の張り替え経費が多くなってしまいます。

そこで見えている壁面だけに張る工法が認定されており、今回採用したものです。耐力としては0.7の低減係数を使うこととなっています。

e0166543_12404952.jpg部屋の中に新設した耐力壁。

なかった壁を新設すると1枚の壁で補強壁の3枚分くらいの効果が出ます。

ここは増築した時に元はあった壁を撤去してしまった経緯があり、しかも2階の角が乗っかる大切な位置でもあることから判断しました。

新設といっても復活ですから床下にはきちんと元の基礎と土台があったので経費的には助かりました。


e0166543_12411229.jpg壁クロスが貼られて完成間近。
補強した場所のクロスの貼り替えも補助金対象工事になります。(耐震に無関係の場所は対象外)

真ん中の壁が窮屈で圧迫感がないか一番気になっていたのですが、完成後には絵を飾って低いテーブルを寄せてうまく使われていたので良かったです。

お家の方も喜んで下さりこちらも一安心。
ありがとうございました。

e0166543_12412993.jpg左は外壁側から補強をした壁です。
サイディングを剥がした後、筋かいと構造用合板で補強しています。



今回の費用

耐震診断     無料
設計監理料  25万円 (設計事務所へ)
工事代金    96万円 (建設会社へ)
上消費税     6万円
合計 ①    127万円 

補助金②    90万円 

支出①-②   37万円 

地震や耐震性に不安があるものの、よくわからないので行動が出来ない方も多いと思います。そのような方々の参考になればと思い依頼者の同意を得て公表させていただきました。
by takahashi-sekkei | 2012-01-29 12:43 | N邸 木造住宅の耐震改修